○月×日 ―曇りのち晴れ―[前編]

○月×日 晴れのち曇り

今日も桜並木の入り口で、いつもの彼女に出会った。

朝のジョギング中にすれ違う可愛い女の子。
高い位置で束ねたちょっと短めのポニーテールを揺らしながら、僕の横を風みたいに駆け抜けていく。

「おはよう」って声をかけてみたいけれど、いつも勇気が出ないんだ。

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○月×日 晴れ

部活の朝錬の前にジョギングをするようになってから、なんだか身体の調子がいいみたい!

風を切って走っている間に、眠っていた身体が目覚めていく感覚がとても好き(*^-^*)

そういえば、いつも桜並木で同じ人に出会う。
同じ年頃の男の子。この近くの人なのかな?

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△月□日 晴天!

今日も、いつもの場所であの子に出会った。
思い切って、すれ違う直前に挨拶をしてみた。

彼女は少し驚いた顔をしながらも、少し走る速度を落しつつ、
「おはよう!」
って、ニコッと笑って返してくれた!

笑顔もやっぱり可愛い! ・・・凄く、可愛いっ!
すれ違った後の僕の顔、たぶん、もの凄くにやけていたと思う・・・。

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△月□日 晴れ

朝のジョギング中にいつもの男の子が、
「おはよう!」
って、すれ違う前に挨拶してくれた。
ちょっとびっくりしちゃったけど、挨拶を返してみた。

彼も、いつも会う人って思ってたのかな?
返事した時のはにかんだ笑顔が優しそう。
ちょっと素敵・・・かも?(*>▽<*)

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★月◎日 曇り

今朝もいつものジョギングコースを走ってみたが、様子が違っていた。
いつもの彼女が、学園の正門前で座り込んでいた。
苦痛に歪んだ顔を見て、異変に気付く。
慌てて駆け寄って声をかけてみた。

「足を捻挫してしまって・・・」

痛みをこらえつつ、彼女はそう言った。
1人で歩くのも大変そうだったので、送って行く事にした。

「毎朝同じところですれ違ってたよね」

聞けば、彼女は部活の朝練の前に走っていたらしい。
練習の前にさらにジョギングもするなんて、頑張り屋さんなんだな。
だけど、それだけ話しただけで、彼女を送り終えてしまった。

「ここに住んでるから、もう大丈夫だよ」

彼女を送り届けた先は、翔愛学園の女子寮だった。
僕と同じ学園の子だったんだ!

今日は学校を休むって言ってた。
足がかなり痛そうだった。心配だな。

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★月◎日 雨

今日は、ちょっと調子に乗りすぎたみたい。
いつもより速く桜並木を走り抜けたくなって、
正門前でスピードを上げた途端に転んでしまった。

立ち上がろうとすると激痛が。・・・捻挫しちゃった。
寮まで、後もう少しだったのに!><

痛みが治まるまで座り込んでいたら、いつもすれ違う彼が立ち止まって、

「大丈夫?」

って、声をかけてくれた。

彼は心配そうに私を見つめながら、帰り道を一緒に歩いて送ってくれた。
女子寮の前でここに住んでるって言ったら、彼はとっても驚いた顔してた。

「僕、森の向こうの男子寮に住んでるんだ!」

・・・だって!
彼も同じ学園の人だったなんて、本当にびっくり!

寮に戻っても足の痛みが治まらないので、大滝先生が学園に欠席の連絡をしてくれた。
明日には、学校行けるといいな。

あ・・・!
彼にお礼言わなくちゃいけないのに、私、彼の名前もクラスも何も聞いてない!!Σ(-△-;)
どうしよう・・・。

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◇月▲日 曇りのち晴れ

今朝は登校する時に、寮の入り口で黒川先生に声をかけられた。

黒川先生

「登校する途中で、女子寮に寄って下さいね」

と言われたものの、この時はどうしてなのかさっぱりわからなかった。

言われた通りに女子寮の入り口まで行ったけれど、
中に入っていいものかどうかと戸惑いながら、階段の下で佇んでいた。
寮から出てくる女生徒達の視線が少し・・・いや、かなり痛かった。

しばらくすると、大滝先生と彼女がやってきて、先生が彼女にこう言った。

女子寮

「昨日助けてくれた人って、彼で合ってるのね?
美月もぼんやりしてるようで、さすがに生徒の事はよく見てるわね!
『毎朝早い時間にジョギングしてる子』で、ホントにわかっちゃうのね!」

彼女は先生に頷きながらお礼を言い、
僕にも昨日のお礼を丁寧過ぎるほどに言ってくれて、なんだか照れくさかった。

足の腫れが引いて、歩けるようになったようで本当に良かった!
けれど、まだ少し痛みがあるようで、足を少しかばう様にしながら歩いていた。

「彼女、こんな状態だから、しばらくの間付き添って登校して貰えないかな?」

突然、大滝先生がこんな頼みごとを僕にしてきたけれど、もちろん断る理由などない。
二つ返事でOKした。

こうして、彼女と一緒に登校する事になった。

(・・・大滝先生と黒川先生、本当に有難うっ!!)

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◇月▲日 雨のち曇り

昨日、彼の事を何も知らない事に気付いて、すぐに大滝先生に相談した。

女子寮2

「男子寮の黒川先生なら、生徒の事だったらきっとわかるはずだわ!」

と、先生が断言してくれた。

どうしても自分の口でお礼を言いたかったから、
彼に登校前に女子寮に寄ってもらえるようにと伝言をお願いしてみた。

伝言はうまく伝わったみたいで、
朝、彼が女子寮の入り口の隅に立って待っていてくれた。

大滝先生に彼で合ってたのかを確認されたので、頷いてお礼を言ったけど、
どちらかと言えば、毎朝、彼がジョギングに出かけるのを見ていた黒川先生にお礼を言うべきなのかも・・・(^^;)

彼にお礼を言ってから、ゆっくり歩いて1人で登校するつもりだったのに、
大滝先生が、彼に思いがけない提案を!!

( 私 、 そ の 話 、 聞 い て な い で す ! 先 生 っ ! ! >△< )

慌てふためいている私をよそに、彼が先に返事をしていた。

「もちろんですっ!!!」

こうして、しばらくの間、彼と一緒に登校する事になった。

だけど、彼と一緒に登校出来るのは、嬉しいな(*^-^*)
彼ともっといろんな話してみたい。
でも、こんなにゆっくり歩いての登校じゃ、彼の迷惑にならないかな?(´・ω・`)

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◆月○日 晴れのち雷雲!?

今日も彼女と一緒に登校した。

「登校するのに時間かかっちゃうね。ごめんね。」

彼女は申し訳なさそうにそう言ったけれど、今の足の状態ではまだ無理は出来ない。
ゆっくり行こうと声をかけた。
それに、歩く速度を合わせながらゆっくり進むと、その分たくさん話が出来るし!
・・・という思惑もあった。

そういえば、朝練の前に走ってるって言ってたなと思い、その話を聞いてみた。

彼女は剣道部に入っているらしい。
仮入部の頃に美琴先輩の試合を見たらしく、すぐに入部を決めたとか。

「凛々しくてカッコ良くて! もちろんそれだけじゃなくて、男子でも敵わないぐらい本当に強くてっ!
私もあんな風になりたいの!!」

と、夢中で話してくれた。
髪も先輩に憧れて伸ばし始めたって言ってたけど、今でも充分に可愛いのにな・・・。

「しばらく部活を休むから剣道場に寄っていくね」

と、彼女が言ったのでそこまで送る事にした。

道場に着くと、男子生徒が声をかけてきた。

「昨日、聞いたよ! 怪我したんだって? 足はもう大丈夫?
・・・そうか、しばらく休むんだね。一緒に練習出来ないのが残念だよ!」

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同じ剣道部員らしく、やたらに親しげに話していたが、
アイツ、まさか彼女の・・・!?

考え始めたら、頭をぐるぐると今朝の出来事が巡ってしまう。
今夜、眠れるのか?

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後編に続く…

文章:第三回シナリオコンテストより

協力:翔愛学園カレッジコースのみなさん

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